MENUS連載小説【第3話】ホームパーティーが盛り上がる!彩り鮮やか「まぐろのづけ寿司」

提供元
メニューズ編集部
時々、無性に食べたくなる料理ありませんか?

口にすると、体中に力がみなぎり、心が満たされるような。
そして、ほっと安心するような。

あなたのことを思って作られた、世界でたったひとつの母の味。

母から娘へ タフな女の夏メニュー【第3話】

仕事のミスをフォローしてくれた松田くんへのお礼は、彼の強い希望により結奈が手料理を振舞うこととなった。

ホームパーティの場はシンイーの家。正確に言うと、シンイーと璃子のエミリが住む家。

一人暮らしの女子の家にみんなで押しかけるのもなんだからと、シンイーが2人の自宅を提供してくれたのだ。

大学の頃から付き合っているという彼女たちはすでに熟年夫婦のような安定感。しばらく彼氏がいない結奈は、その関係を羨ましく思っていた。

集合時間の1時間半前。

ヴィンテージマンションをリノベしたおしゃれなキッチンで、結奈は食材を並べて料理の段取りを組む。

シンイーと璃子も手伝ってくれるというので、料理は1時間ほどで終わるだろう。

メニューは、夏らしくかぼちゃの冷たいポタージュ、お酒のつまみにもなる枝豆とチーズのディップ、そして結奈お得意のまぐろのづけ寿司の予定だ。
「つまり…… これから松田が連れてくる友達が、結奈のよく行くカフェのウェイターで、ケータリングを請け負ってくれた人で、さらに結奈のタイプ、ということでOK?」

さやえんどうの筋を取りながらシンイーが言う。

その横で、璃子がテーブルにグラスを並べながら、いたずらな目で結奈の顔を覗き込む。

「そう、概ね合ってる。そしてタイプなの(笑)」と、結奈が答えると、2人は顔を見合わせて笑った。

下準備が終わり、あとは盛り付けるだけ。

結奈は、すし飯にさやえんどうを混ぜて皿に盛り、まぐろのづけ、炒り卵をのせる。そしてごまをふり、細切りにしたシソを飾った。
まぐろのづけ寿司はお母さんの得意料理。「簡単だけど豪華に見えるでしょ?」と、人が集まる時によく作っていたおもてなしメニューの一つで、結奈の大好物でもある。

見た目も味も絶品なのはもちろん、何よりも、大勢でおいしいものを食べる幸せな気持ちを思い出す、結奈にとっては特別なメニューだ。

お母さんからは、あの電話の後に「結奈の努力が認められたのね、よかったね」というメッセージと呑気な👍スタンプが送られてきた。

仲良し母娘、すぐにいつもの関係に戻る。と言うより、それが日常のパターンだ。

ましてや今回は、いい歳をして、寂しがり屋の“甘え”からきた“拗ね”だということは自分でも分かっているので苦笑いするしかない。
「このまぐろのづけ寿司って、お母さんのレシピなんだよね?結奈のお母さんって、どんな人?」とシンイーが聞いてきた。

「うーん……、とにかく元気だね。料理が好きで、食べることも大好きで。よく笑って、よく動いて。毎日、忙しそうにしてるよ」

「結奈のお母さんって感じだね」シンイーと璃子はまた顔を見合わせて笑う。

その時、璃子のスマホが鳴った。どうやら仕事の電話のようだ。スマホを持ってテラスへ出て行った。

その後ろ姿を見ながらシンイーが言う。

「お盆休みに、璃子と中国へ帰省するんだ。両親に彼女を恋人として紹介しようと思って」

それはつまり親にカムアウトすることを指す。

「シンイーのお母さんはどんな人なの?」と結奈は聞いた。

「いいお母さんだよ。私、子供の頃から“自立した女性になりなさい”って言われて育ったの。だから、自分の人生は、自分で責任さえ持てば好きなように生きていいんだと思うようになったんだ。セクシュアリティの面でもね。そう教えてくれた両親に感謝してる」

さらりとそう言ったシンイーが、すごく大人に見えた。彼女のお母さんならきっと、彼女の全てを受け入れてくれるだろう。

ピンポーン。その時、インターホンが鳴った。今日のお客が到着したようだ。

「いらっしゃい」

ワインのボトルを両手に持って登場した松田くんの後ろには……。

いた!あのカフェのウェイター、つまり結奈のタイプの彼が、クシャッとしたあの笑顔で佇んでいた。
「かんぱ〜い!!」

シンイーと璃子は結奈の表情から、例の彼だと分かったらしい。2人は終始ニヤニヤしている。

例の彼、名前は春馬くん。松田くんの前情報通り、料理好きが高じてケータリングの会社を起こした若き起業家。

口数は少ないけれど、聞き上手で温厚。身のこなしもスマートで、誰かのグラスが開けばさりげなくお酒を注ぎ足してくれる。

なにより、大きな目を細めてクシャッと笑うくったくのない笑顔が、結奈の超絶タイプだった。

しかし、結奈は浮かない顔……。なぜなら、彼は結奈を覚えていなかったのだ。

まぁ、毎日いろんな人が店に来るのだから、顔を覚えている方が珍しいことだろう。

そんななか、松田くんはよく食べ、よく飲み、よく喋る。

結奈の作った料理を「おいしい、おいしい」とお代わりし上機嫌だ。

ディップにつけるバケットを切ろうとキッチンへ行くと、シンイーが追ってきた。

「春馬くん、ステキな人だね」と言うシンイーに「覚えてなかったけどね」と自虐気味に答えると、彼女は急に声を潜めて言った。

「そんな春馬くんよりさ、松田はどうなの?
松田って、結奈のこと好きだと思うんだよね」

「えー、嘘でしょ。からかうのやめてよ(笑)」

しかし、それは嘘じゃなかった。なぜなら数時間後、結奈は松田くんに告白されたのだ。

■ 今週のレシピ

見た目良し・味良し!まぐろのづけ寿司

彩り鮮やかなまぐろのづけ寿司は、ホームパーティーにぴったり!
意外と簡単に作れるのも嬉しいですよね。大勢でわいわい楽しみましょう♪

お酒にぴったり!枝豆とチーズのディップ

材料を混ぜるだけでOK♪お酒がすすむ簡単おつまみです。
クラッカーやバゲットと一緒にどうぞ!

爽やか♪かぼちゃの冷たいポタージュ

優しいかぼちゃの旨味を楽しめるレシピ。
夏におすすめの爽やかな味わいのスープです。
writer
吉岡美奈